AIは毎回忘れる。だから「引き継ぎ書」を書いておく
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前回、毎回やる仕事は手順書に名前をつけて一言で呼べるようにする、という話を書きました。手順書は「どうやるか」を渡すものです。
ただ、それだけでは足りないことに、わりと早い段階で気づきました。AIは、やり方だけでなく、こちらの事情も毎回忘れるからです。
毎回、新人が来ると思ったほうが早いです
AIは、会話が終わると、その会話で話したことを忘れます。うちの会社が何を大事にしているか。誰が何を担当しているか。先月どこまで進んだか。前に試してうまくいかなかったこと。次の会話では、全部ゼロに戻っています。
最初はこれが不便で、AIの欠点だと思っていました。いまは少し違っていて、これは欠点というより前提だと思っています。毎回、新人が来る。そう思ったほうが、話が早いです。
新人が毎日来る会社があったら、どうするでしょうか。毎朝、口で一から説明する会社はないと思います。引き継ぎ資料を作って、まずそれを読んでもらうはずです。AIにも、同じことをしました。
私の引き継ぎ書は、3枚です
私が用意しているのは、大きく3つです。
ひとつめは、いまの状況と決めごとです。いま何が動いていて、何が止まっていて、次に何をするのか。それと、うちではこうする、これはやらない、という決めごと。これを1枚にまとめて、AIが最初に読むものにしています。
ふたつめは、これまでやったことの一覧です。過去に手がけた仕事を、1件につき1行で並べたものです。何をやったか、いつやったか、それだけです。
みっつめは、つまずいたことと、そこからの学びです。前にこの作業でここに引っかかった。この判断は間違いだった。そういう記録を、起きたときに1行ずつ足しています。
全部は読ませません
引き継ぎ書で気をつけているのは、全部を毎回読ませないことです。
過去の記録を全部読ませると、それだけで重くなりますし、関係のない情報まで混ざって、かえって判断がぶれます。人間でも、100ページの引き継ぎ資料を毎朝読んでから仕事を始める人はいません。
なので、順番を決めています。最初に読むのは、いまの状況と決めごとの1枚だけ。次に、やったことの一覧を眺めて、いまの仕事に関係がありそうなものがあれば、そのときだけ詳しい記録を読む。関係がなければ、何も読まずに始める。
一覧を1件1行にしているのは、このためです。軽い目次があるから、必要なときに必要な部分だけを取りに行けます。
効くのは、2回目からです
引き継ぎ書の効果は、同じような仕事の2回目に出ます。
前にやった仕事と似た依頼をすると、AIは一覧からそれを見つけて、前回のやり方と、前回引っかかった場所を知った状態で始めます。一から説明する必要がありませんし、同じ失敗をもう一度することもなくなります。
そして、地味に大きいのが、「うちの会社の常識」を毎回説明しなくてよくなることです。この取引先にはこういう言い方をする、この数字はこう数える、これは外に出さない。口で言うと長いことが、書いておけば一度で済みます。
看護師の「申し送り」と、同じ形でした
以前、大学病院で看護師をしていました。病棟には、勤務が交代するたびに「申し送り」があります。患者さんは昼も夜も同じ人が続いているのに、担当する側は数時間ごとに入れ替わります。だから、次の担当に状態と注意点を渡してから帰ります。
引き継ぎ書を作りながら、これと同じだと思いました。仕事は続いているのに、担当するAIは毎回入れ替わる。それなら、渡すものを決めておけばいい。申し送りがあれば、担当が替わっても患者さんのケアは途切れません。引き継ぎ書があれば、AIが替わっても仕事は途切れません。
書いてみると、言葉になっていない決めごとが見えます
引き継ぎ書を書き始めると、ひとつ気づくことがあります。自分の会社に、言葉になっていない決めごとがたくさんあることです。
「これはこうする」と当たり前にやっていたことが、書こうとすると、初めて言葉になります。そして書いた瞬間に、それはAIにも、新しく入る人にも、渡せるものになります。
AIに毎回、会社の事情を説明しているなと感じたら、その説明を1枚に書いてみてください。手順書が「どうやるか」を渡すものなら、引き継ぎ書は「何を知っておいてほしいか」を渡すものです。この2枚があると、AIは毎回来る新人ではなく、続きから始められる相手になります。