1件15分のデータ登録が、何件あっても5分になった話
Share
データ登録の話をします。議事録よりさらに地味ですが、こちらのほうが「うちにもある」と思ってもらえる気がしています。
私の場合は、商品の情報でした
私の仕事には、新しい商品の情報を管理画面に登録する作業があります。名前、価格、品番、在庫数。項目は決まっていて、元になる資料も手元にあります。
これが1件あたり15分かかっていました。
中身を分解すると、ほとんどが「写すこと」でした。資料を開いて、名前をコピーして、管理画面に貼る。価格を見て、打ち込む。品番を確認して、また打ち込む。項目の数だけ、これを繰り返します。
そして写す作業には、見比べる作業がセットで付いてきます。価格の桁は合っているか。品番はずれていないか。外に出る情報なので、間違えるとそのまま事故になります。写して、見比べて、また写す。それで15分でした。
「繰り返し」の、いちばん分かりやすい形です
1本目の記事で、AIで解ける面倒は「散らばり」「繰り返し」「判断」の3つに収まる、と書きました。
データ登録は、このうちの「繰り返し」です。それも、いちばん分かりやすい形の繰り返しだと思います。元データがあって、写す先があって、間のルールが決まっている。1件目も100件目も、やることは同じです。
ただ、ここが少し不思議なところで、こういう作業ほど「人がやるもの」として扱われがちです。私も長いあいだ、そう思っていました。正確さが求められるから、人の目が要る、と。
実際は逆でした。正確さが求められて、量があって、ルールが決まっている。これは人間よりも機械が得意な条件が、きれいに揃っている状態でした。
作ったのは、元データを入れると登録できる形になって出てくる仕組みです
そこで、AIと一緒に仕組みを作りました。
表計算のシートに元のデータを入れると、管理画面にそのまま一括で取り込める形のファイルが、自動で出てきます。中身は小さなプログラムですが、書いたのはAIです。
私がやったのは、転記のルールを言葉にすることでした。「元データのこの列が名前」「価格はこの列」「品番はこの形式に揃える」。この作業をずっと自分でやってきたので、ルールは全部頭の中にありました。それをAIに説明しただけです。
今は、元データを入れて、出てきたファイルを取り込むだけになりました。何件あっても、全体で5分ほどです。1件ずつ15分かけていた頃とは、時間の数え方そのものが変わりました。
残したのは、確認と公開の判断です
前回の議事録と同じで、任せていない仕事も決めてあります。
ひとつは、取り込んだあとの最終確認です。価格や在庫の数字を、自分の目で確かめます。もうひとつは、公開の判断です。並べるかどうか、いつ並べるか。ここは自分の仕事として残しました。
理由も前回と同じです。外に出た情報が間違っていたら、直して謝るのは私になります。責任が発生する最後の工程なので、渡しません。
「写す係」と「確認する係」を、同じ人がやっていました
数字としては「1件15分が、何件でも5分になった」という話です。ただ、実際に変わったのは時間よりも体制のほうでした。
以前は、写す係と確認する係を、同じ人間がやっていました。自分で写したものを自分で見比べるので、どうしても甘くなります。疲れてくると、なおさらです。
いまは、写すのは仕組みで、確認するのは私です。仕組みは疲れないので、10件目でも100件目でも同じルールで写します。私は確認だけに集中できます。
同じ人が両方やっていた頃より、ずっと安心な体制になりました。時間が減ったことより、こちらのほうが大きかったです。
うちの「写す仕事」はどこか
私の場合は商品の情報でしたが、形は同じものがどの会社にもあると思います。
顧客の情報を台帳に入れる。仕入れの明細を転記する。届いた注文を別のシステムに打ち直す。請求のデータを毎月まとめる。「元データがあって、写して、見比べる」という形なら、全部同じです。
もし1本目の記事のように面倒を書き出してみたなら、その中の「繰り返し」のところを、もう一度見てみてください。写す仕事が混ざっていたら、それは最初の1本の候補です。
「これは人がやるしかない」と思い込んでいる作業の中に、機械のほうがずっと得意なものが混ざっています。私の場合、それが転記でした。