デジタル化・AI導入補助金で、小さな会社がAIに使えるもの・使えないもの
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デジタル化・AI導入補助金は、令和7年度補正予算の事業(2026年の公募)から名前が変わった、旧「IT導入補助金」です。使えるのは、事務局に登録されたITツール(AIを含むソフトウェアなど)を、登録された支援事業者を通して導入する費用です。
なので、「AIを入れるなら何でも補助される」わけではありません。小さな会社が使うなら、先に「どの仕事を楽にしたいか」を決めて、それに合うツールが登録されているかを確かめる、という順番がおすすめです。
この記事では、公募要領(通常枠)をもとに、使えるもの・使えないもの・よくある誤解を整理します。内容は2026年9月時点のものです。申請する前には、必ず事務局の公式サイトで最新情報を確認してください。
名前は変わったけれど、仕組みはIT導入補助金のまま
「AI導入補助金」と聞くと、AIのための新しい補助金ができたように見えます。実際は、令和7年度補正予算の事業から、IT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に名前を変えたものです(中小企業庁の告知)。
公募要領では、補助の対象になるITツールを「ソフトウェア(AIを含む)」と明記しています。一方で、AIだけの特別な枠ができたわけではありません。仕組みの骨格は、これまでのIT導入補助金と同じです。
なお、「複数者連携デジタル化・AI導入枠」という枠もありますが、これは商店街などの複数の事業者が連携して申請するもので、AI専用の枠ではありません。
通常枠の金額と補助率
一番多くの会社が使う「通常枠」は、次のとおりです(事務局サイトの通常枠のページ)。
| 補助額 | 必要な業務プロセスの数 | 補助率 |
|---|---|---|
| 5万円〜150万円未満 | 1つ以上 | 1/2以内 |
| 150万円〜450万円以下 | 4つ以上 | 1/2以内 |
2024年10月〜2025年9月のうち3か月以上、2025年度改定後の地域別最低賃金を下回る賃金で雇っていた従業員が全従業員の30%以上いる場合は、補助率が2/3以内になります(別途、賃金状況報告シートの提出が必要です)。また、150万円以上を申請する場合は、賃上げの目標を立てることが必須です。
「業務プロセス」は、ソフトウェアがどの仕事を効率化するかの区分です。顧客対応・販売、決済・債権債務、在庫・物流、会計・財務、総務・人事・労務などが決められていて、導入するソフトウェアがこのどれかの機能を持っている必要があります。
使えるもの
公募要領で補助の対象になっているのは、大きく3つです。
ソフトウェア
事務局に登録された業務ソフトです。クラウドのように月額・年額で払うものは、最大2年分が対象になります。AIの機能を持つソフトも、登録されていれば対象です。AIが搭載されているかどうかは、事務局サイトの「ITツール検索」で確認できます。
オプション
機能の追加、データ連携ツール、セキュリティなどです。費用は最大1年分が対象になります。
導入のための支援(役務)
導入のコンサルティング、活用のコンサルティング、導入の設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポートです。ただし、登録されたソフトウェアと対になっているものに限られ、合計の上限は200万円です。
使えないもの・気をつけたいこと
逆に、公募要領で対象外とされている経費や、申請の要件から外れるもののうち、小さな会社が引っかかりやすそうなものを挙げます。
- 交付決定の前に買ったもの。先に契約・購入してしまうと、あとから申請しても対象になりません
- 登録されていないツールやサービス。どんなに良いツールでも、事務局に登録されていなければ使えません
- 汎用のツールだけ。業種や業務を限定しない「汎用」の区分のツールは、それだけでは申請できず、業務プロセスを持つソフトと組み合わせる必要があります
- 補助金の申請代行費
- リース・レンタル契約のツール
- 申請の時点で、利用金額が決まっていないもの
特に1つ目は、知らないと取り返しがつきません。「補助金を使うかもしれない」と思ったら、契約する前に止まるのが安全です。
「ChatGPTの料金に使えますか?」
いちばん聞かれそうな質問なので、分けて書きます。
答えは、「そのサービスが、ITツールとして登録されているかどうかで決まる」です。補助金の対象かどうかは、AIかどうかではなく、登録されているかどうかで決まります。汎用のAIサービスの場合は、上に書いた「汎用のツールだけでは申請できない」という条件にも当たる可能性があります。
気になるツールがあれば、事務局サイトの「ITツール検索」で名前を調べるか、IT導入支援事業者に聞いてみるのが確実です。
申請の流れは、支援事業者と一緒に進める
この補助金は、会社が1社だけで申請するものではありません。ITツールを提供する「IT導入支援事業者」と一緒に申請する仕組みです。
おおまかな流れは次のとおりです。
- 自社の課題を整理する
- IT導入支援事業者に相談して、導入するツールを決める
- 「GビズIDプライム」を取得し、IPAの「SECURITY ACTION」(★一つ星か★★二つ星)を宣言する(どちらも申請の要件です)
- 支援事業者と一緒に交付申請をする
- 交付決定のあとに、契約・導入する
- 実績を報告し、補助金を受け取る
申請は、通常枠では1社につき1回までです(不採択だった場合は、次の締切回に申請し直せます)。
締切は回ごとに決まっています。2026年9月24日時点では、通常枠の5次締切が9月29日(交付決定は11月9日予定)です。その後も、6次(10月30日締切)、7次(12月1日締切)が予定されています。最新の日程は事務局サイトの事業スケジュールで確認してください。
もらって終わりではない、という点も知っておく
補助金は、交付を受けたら終わりではありません。申請の前に、次の点も知っておくと安心です。
- 3年間の事業計画が要件です。1年後に労働生産性を3%以上、計画期間中は年平均3%以上向上させる計画を立てて実行します(過去に交付決定を受けた会社は、より高い目標になる場合があります)
- 導入後も、数年にわたって効果の報告があります。2028年4月以降、年度ごとに報告します
- 賃上げの目標が必須の申請で目標を達成できないと、補助金の全部または一部の返還を求められる場合があります
- 審査があり、申請すれば必ずもらえるわけではありません
補助金ありきで選ぶと、遠回りになりやすい
補助金は、うまく使えば導入の負担を大きく減らせます。ただ、「補助金が出るから、このツールを入れる」という順番で選ぶと、遠回りになりやすいと思っています。
ツールが先に決まると、自社の仕事をツールに合わせることになります。結果として、導入はしたけれど使われない、ということが起きがちです。
以前の記事で、会社の面倒は「散らばり」「繰り返し」「判断」の3つに分けられる、と書きました。補助金を考えるときも、まずはここからだと思います。
- どの仕事の、どんな面倒を減らしたいのかを決める
- それを解くのに、どんな種類のツールが合うかを考える
- 合うツールが登録されているかを確かめる
- 登録されていれば、補助金を使う
この順番なら、補助金が使えなかったとしても、何を入れるべきかははっきりしています。補助金は、最後に「使えたらラッキー」くらいの位置づけでちょうどいいかもしれません。
よくある質問
Q. 個人事業主でも使えますか?
公募要領では、申請の単位を「1法人・1個人事業主」としていて、個人事業主も対象に含まれています。ただし、業種ごとの規模などの条件があるので、公募要領で自社が当てはまるかを確認してください。
Q. 前にIT導入補助金を使ったことがあります。また使えますか?
使える場合があります。ただし、IT導入補助金2025の通常枠で交付決定を受けた場合は、交付決定日から12カ月以内は通常枠に申請できません。また、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある場合は、補助額が150万円未満でも賃上げの目標が必須になり、審査では減点されます。2024・2025で導入したソフトウェアと業務プロセスが完全に同じ場合は、不採択になります。
Q. 自分で申請書を書けば、支援事業者はいりませんか?
この補助金は、IT導入支援事業者と一緒に申請する仕組みなので、支援事業者なしでは申請できません。導入したいツールを扱っている支援事業者を、事務局サイトで探すところから始めることになります。
出典
この記事の内容は、次の公式資料をもとにしています(2026年9月24日確認)。