AIに任せる仕事、任せない仕事の線引き
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前回、会社の面倒を「散らばり」「繰り返し」「判断」の3つに分ける話を書きました。分けてしまえば、解き方は自動的に決まります。
ただ、そこから先で必ず出てくる質問があります。「で、どこまで任せていいのか」です。
任せすぎれば事故が起きます。任せなさすぎれば、結局なにも楽になりません。今回は、私が実際にどこで線を引いているかを書いてみます。
私がAIに任せている仕事
まず、任せている側です。
- 会議の文字起こしと、議事録の下書き
- レポートの集計と整形
- 顧客への返信文の下書き
- 見積もりのための相場調べと、たたき台づくり
- 調べ物の一次整理
共通しているのは、量が多くて、繰り返しがあって、人間がやるより速くて正確な仕事です。ここは任せるほど楽になります。
で、大事なのはここからです。
任せないと決めている仕事が3つあります
1つ目は、レポートの数字の最終チェックです。
集計も整形もAIに任せています。でも、クライアントに出す前の数字の確認は、必ず自分の目でやります。レポートの数字は、相手がそれを見て判断を下すものだからです。
2つ目は、見積もりと価格の決定です。
相場を調べたり、たたき台を作ったりはAIにやってもらいます。でも、最後にいくらで出すかは自分で決めます。価格は約束であり、自分の仕事への値付けそのものだからです。
3つ目は、顧客への返信文の「送信」です。
下書きはAIが書きます。正直、私が書くより丁寧な文章が出てくることも多いです。それでも、送る前の最終確認と「送る」の判断は自分でやります。送った瞬間に、それは私の言葉になるからです。
線の引き方は、ふたつあります
3つの例を並べてみると、共通点が見えてきます。
ひとつは「責任の所在」です。
間違えたとき、誰が謝るのか。数字も、価格も、顧客への言葉も、間違えたら謝るのは私です。AIは謝れません。責任を取れない相手に、責任が発生する仕事の最後の工程は渡せない。シンプルにそういうことだと思っています。
もうひとつは「基準づくり」です。
「この数字は怪しい」「この価格は安すぎる」「この文面はうちらしくない」。こういう良し悪しの基準を作るのは、人の仕事です。逆に、基準さえ言葉にできていれば、基準どおりに回す作業はAIに任せられます。
私は以前、大学病院で看護師をしていました。あの現場に「モニターは機械、顔色は人」という感覚があります。心拍のモニタリングなどは機械のほうが確実で、24時間ずっと見ていられます。ただ「この波形が出たら呼ぶ」という基準を決めるのは人ですし、患者さんの顔色から何かを察するのも人の側でした。
いまやっていることは、あのときと同じ構造だと思っています。
線を引くと、逆に任せられるようになります
意外に思われるかもしれませんが、「任せない仕事」を先に決めると、任せられる範囲は一気に広がります。
線を引いていないと、AIの出力すべてを疑い続けることになります。全部をチェックするなら、自分でやったほうが早い。こうして、せっかく作った仕組みが使われなくなっていきます。私も、そうやって使わなくなった仕組みがいくつもあります。
線を引いてあれば、チェックすべき場所は最後の一点だけです。そこさえ押さえれば、残りは安心して任せられます。
こうして考えていくうちに、AIを「1人の社員」として捉えるようになりました。仕事は速くて正確だけれど、会社としての責任は取れないし、良し悪しの基準は上司が示す必要がある社員です。そう考えると、「何を任せるか」はAIの話というより、マネジメントの話に近いのだと思います。
最初に考えるのは、ツールではありません
この線引きは、会社や業務によって違います。同じ「請求書の作成」でも、社内で完結するのか、外に出て相手が判断材料にするのかで、任せられる範囲は変わります。
もしAIを仕事に使い始めるなら、ツール選びの前にこの質問を考えてみてください。
うちの仕事で、責任が発生する最後の工程はどこか。
そこさえ決まれば、残りは任せていい範囲です。前回の3分類で「何を解くか」が決まり、この線引きで「どこまで任せるか」が決まります。この2つが決まっていれば、ツールは後から選べます。