「うちの何にAIを使えばいいか」が分からないときの、面倒の分け方

AIの話になると、だいたい同じところで止まります。

「すごいのは分かった。で、うちの何に使えばいいのか」

ここです。私が経営者の方と話していて、いちばんよく聞く言葉かもしれません。ツールの名前は知っている。ニュースも見ている。試しに触ってもみた。それでも、自分の会社の何が変わるのかが見えてこない、という状態です。

私も同じところで止まっていた時期があります。抜けられたきっかけは、新しいツールを覚えたことではありませんでした。考える順番を逆にしたことでした。

「AIで何ができるか」から考えると、永遠に決まりません

うまくいかないときは、だいたいAIのほうから考えています。

文章が書ける。画像が作れる。要約ができる。分析もできるらしい。できることを並べていくと、可能性は無限に広がります。ただ、広がるだけで、自分の会社のどこに置けばいいかは一向に決まりません。

しかも、できることは毎月増えます。追いかけているうちに時間だけが過ぎていきます。

順番を逆にすると、これが止まります。AIから考えるのをやめて、自分の会社の「面倒」から考えるという順番です。

AIで解ける面倒は、だいたい3つに収まります

ここが今日いちばん書きたいところです。

会社の中の面倒な仕事を集めてきて、AIで手が届きそうなものを見ていくと、たいてい次の3つのどれかに収まります。

1. 散らばり — 必要な情報があちこちにあって、集めるだけで時間が溶ける仕事です。数字がツールごとに分かれている、進捗が人の頭の中にある、といった状態がこれにあたります。これは集約で解けます。

2. 繰り返し — 毎回ほぼ同じ手順を、人が手で繰り返している仕事です。転記、清書、定型の連絡文など。これは自動化で解けます。

3. 判断 — 考えるのに時間がかかる仕事です。見積もりの相場を調べる、返信の文面を練る、優先順位を決める。これは自動化できませんが、AIにたたき台を出させることで速くなります。

分類する意味は、分類した瞬間に解き方が決まることです。散らばりなら集約、繰り返しなら自動化、判断ならたたき台。「AIで何ができるか」を調べなくても、進む方向が決まります。

私の場合で言うと

自分の仕事を同じように分けてみると、こうなりました。

会議の議事録は、繰り返しでした。録音を聞き直して、清書して、共有する。毎回まったく同じ手順です。ここを仕組みにしたら、週に3〜4時間かかっていたものが、30分から1時間になりました。

広告のレポートは、散らばり繰り返しの両方でした。数字が複数の管理画面に分かれていて、それを集めて、決まった形に整えていました。集約と自動化を組み合わせたら、月に半日かかっていた作業が数分で終わるようになりました。

商品の登録は、繰り返しです。1件15分かかっていたものが、何件あっても全体で5分になりました。

並べてみると分かるのですが、どれも派手な仕事ではありません。誰かに見せて感心されるようなものでもないです。ただ、この手の作業には共通点がありました。やっても何も生み出していないということです。

議事録を清書している時間は、会議で決まったことを前に進める時間ではありません。数字を集めている時間は、その数字から何かを考える時間ではありません。本来やるべき仕事の手前で、毎回止まっていました。減らしたかったのは作業量というより、この状態のほうでした。

この3つに入らない面倒もあります

正直に書いておくと、会社の面倒がすべてこの3つに収まるわけではありません。

ひとつは、体を動かす仕事です。梱包や配送、店頭での接客。ここはAIの外側にあります。

もうひとつは、まだデータになっていない仕事です。紙とFAXでやりとりしている、必要な情報が誰かの手帳の中にしかない。この場合は、分類の前に「まずデータにする」工程がひとつ入ります。ここを飛ばして自動化しようとすると、たいてい途中で止まります。

3つ目は、人と組織の問題です。承認が下りない、決めたことが現場で動かない。仕組みで軽くできる部分はありますが、根っこは別のところにあります。

なので「3つに分ける」は、会社の面倒すべてを説明する枠ではありません。AIで手が届く範囲を切り出すための道具だと思ってもらえるとちょうどいいです。

最初の1本は、2つの掛け算で選びます

面倒を分類できたら、次は「どれから手をつけるか」です。全部を一度にやろうとすると、たいてい何も終わりません。

私は2つの掛け算で決めています。

ひとつは効果です。どれくらい頻繁に発生して、どれくらい時間を取られているか。月に一度しか起きない面倒より、毎週必ず起きる面倒のほうが効きます。

もうひとつは実現しやすさです。これは「データがどれくらい手元に近いか」で決まります。すでに手元にデータが揃っているものは早く形になりますし、まず紙をデータにするところから始める必要があるものは時間がかかります。

議事録から始めたのは、この掛け算の結果でした。毎週必ず発生して、録音データはすでに手元にありました。効果も実現しやすさも高い、いちばん手前の1本だったからです。

まずは、書き出すところから

もし「うちの何に使えばいいか」で止まっているなら、ツールを調べるより先に、面倒を書き出してみてください。

紙でもメモアプリでも構いません。思いつく順に10個くらい並べて、それぞれに「散らばり」「繰り返し」「判断」のどれかを書き添えるだけです。

やってみると、たいてい繰り返しが一番多いはずです。そして繰り返しは、いちばん解きやすいところでもあります。

そこまで分かれば、最初の1本はもう見えています。

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