属人化の解消は「辞める・休む・増える」の場面から考える。小さな会社のほどき方の例
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属人化を解消するときは、全部の仕事を一度にマニュアル化しようとするより、「困る場面」から逆算して、1つずつほどいていくほうがうまくいきます。
困る場面は、大きく3つです。担当者が辞めるとき、急に休むとき、そして仕事や人が増えるときです。場面によって、先に言葉にしておくべきものが違います。
この記事では、3つの場面ごとに、小さな会社でのほどき方の例を書きます。どれも特定の会社の話ではなく、よくある形を例にしたものです。
場面によって、先に言葉にするものが違う
先に、全体をまとめておきます。
| 場面 | いちばん困ること | 先に言葉にするもの |
|---|---|---|
| 辞める | やり方と判断が、その人と一緒になくなる | 判断の基準 |
| 休む | いまどこまで進んでいるかが分からない | 進み具合と、次にやること |
| 増える | 教える時間が足りない | 手順 |
以前の記事で、属人化をほどく順番として「手順を言葉にする」「判断の基準を言葉にする」と書きました。どちらも大事ですが、場面によって、どちらから手をつけるかが変わります。
辞めるとき:判断の基準を先に残す
退職が決まったときは、期限があります。全部を引き継ぐ時間は、たいていありません。
このとき先に残したいのは、手順より判断の基準だと思います。手順は、あとから別の人が試しながらでも組み立て直せます。一方で「なぜこの金額にしたのか」「なぜこの取引先を優先したのか」といった判断は、本人がいなくなると、誰にも分からなくなります。
たとえば、見積もりの担当者が3か月後に辞める場合
- 過去の見積もりをいくつか並べて、本人に「なぜこの金額にしたか」を話してもらう
- 話した内容をAIに文章にしてもらい、判断の基準の下書きを作る
- 本人に下書きを直してもらう
- 後任の人が、次の見積もりでその基準を使ってみて、迷ったところを本人に聞く
ポイントは、4を本人がいるうちにやることです。基準を書いただけでは、書いた本人には当たり前のことが抜けています。別の人が実際に使ってみて、初めて抜けが見つかります。
休むとき:進み具合と、次にやることを見えるようにする
急な病気や家庭の事情で、担当者が突然休むことがあります。このときに一番困るのは、やり方が分からないことより、「いまどこまで進んでいて、次に何をすればいいか」が分からないことです。
なので、この場面で先に言葉にしたいのは、進み具合と、次にやることです。
たとえば、月末の締めの作業を1人が担当している場合
- 締めの作業を、いくつかの項目に分けたチェックリストにする
- 担当者は、終わった項目に印をつけながら進める
- チェックリストは、他の人も見られる場所に置いておく
これだけで、担当者が途中で休んでも、別の人が「ここまでは終わっていて、次はこれ」と分かります。一つひとつの項目のやり方までは書けていなくても、どこで止まっているかが分かれば、本人に電話で1つだけ聞く、といった対応もしやすくなります。
以前の記事で、AIに毎回「いまの状況と決めごと」を書いた1枚を読ませている話を書きました。人の仕事でも同じで、「いまどこまで進んでいるか」が1枚で分かるだけで、休んだときの混乱はかなり減ります。
増えるとき:手順を書いて、教える時間を減らす
繁忙期で仕事が増えたときや、新しい人が入ったときは、教える時間が足りなくなります。ベテランが教えるたびに自分の仕事が止まり、結局「自分でやったほうが早い」となって、属人化がさらに進みます。
この場面で効くのは、手順を書いておくことです。
たとえば、受注の入力を新しい人に任せたい場合
- ベテランが入力するところを一度見せながら、やっていることを話してもらう
- 話した内容をAIに文章にしてもらい、手順書の下書きを作る
- 新しい人がその手順書を見ながら入力してみて、分からなかったところを書き足す
3がポイントです。手順書は、書いた人ではなく、使う人が直すと良くなります。新しい人が迷ったところこそ、書いてあるべきところだからです。
私の場合も、同じ形でした
AIに仕事を頼み始めたころ、私も同じ仕事を頼むたびに、毎回口で頼み方を説明していました。この「増える」場面に近い状態です。
そこで、その説明を手順書として1枚に書いたら、説明はいらなくなりました。あわせて、いまの状況と決めごとも1枚にまとめて、AIが最初に読むようにしています。相手はAIですが、やっていることは、人に仕事を引き継ぐのとほとんど同じだと思っています。
どの場面でも、共通していること
3つの場面を並べてみると、共通点があります。
- 一度に全部やらず、困る場面に合わせて1つから始める
- 本人がゼロから書くのではなく、話してもらってAIに下書きにしてもらう
- 書いたものを、別の人が実際に使って直す
特に3つ目は、どの場面でも欠かせないと思っています。属人化が解消できたかどうかは、書いたものがあるかではなく、別の人がそれを使って仕事を回せるかで決まるからです。
属人化チェックシート
どの仕事から手をつけるかを決めるための、チェックシートを用意しました。仕事を書き出して、「分かる人の数」や「1週間休んだらどうなるか」を埋めていくと、最初にほどく仕事が見えてきます。
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よくある質問
Q. 退職まで2週間しかありません。何から残せばいいですか?
時間が短いときほど、判断の基準を優先するのがおすすめです。本人に「迷ったときに、何を見て決めていたか」を話してもらい、録音や文字起こしで残しておくだけでも、あとで大きな助けになります。
Q. 担当者が忙しくて、話してもらう時間も取れません。
最初から全部を聞こうとせず、1回に1つの仕事だけ、短い時間で話してもらうのが現実的だと思います。実際に作業しているところを横で見ながら話してもらうと、改めて時間を取るより負担が少なくて済みます。
Q. 属人化が解消できたかどうかは、どう判断すればいいですか?
いちばん分かりやすいのは、担当者以外の人が、書いたものを見ながら1人でその仕事を終えられるかどうかです。途中で担当者に聞きに行く回数が減っていけば、解消に近づいていると考えてよいと思います。